母の青い花
- 2025年10月20日
- 読了時間: 2分
更新日:2025年10月25日
父が亡くなった日、お通夜に車椅子の母を連れて行きました。父が亡くなった瞬間から感情を無くしてしまったように、ただ呆然と座ったままの母に向かって
「行くよ」
と言うと、母は微かにうなずきました。
お通夜が行われる会場に入り、花でいっぱいの祭壇を見た瞬間、母の顔がパッと明るくなり
「良かった。昨日の夜、お父さんと二人でここに来て、ここでお葬式しようって決めたんだよ。青いデルフィニウムの花が沢山飾ってあったから。」
花に詳しい母らしい言葉だけど、昨夜の父は危篤状態で母と二人でここに来るはずもなく、母は、父の死のショックでおかしくなったのか、と思いました。
こういう時は否定してはいけないと思い、

「そうか。綺麗な花がたくさんでよかったね。この色はお母さんが好きな色やもんね。」
私はそう言いながら、車椅子を押して祭壇の前に安置してある父の棺に近づきました。その時、祭壇の花の中に立つ父の姿を、確かに見たのです。
「あ、お父さん…」
そして母の目線も、立っている父に注がれていたように見えました。でも母は何も言わず、私たちは、次第に薄くなって消えていく父の姿を見つめ続けました。
その後、父の四十九日が終わった次の日、後を追うように母も亡くなりました。母の死顔は微笑んでいるように見えました。父が迎えに来ていたのが見えて、微笑んでいたのかもしれません。
亡くなった人が見えるのは、その人のことを想う気持ちが見せているまぼろしなのでしょうか?私にはわかりませんが、あの時、父は確かにあの場所に居たのだと思います。
父と母。二人のいる天国の花畑にも、あの青い花が咲いているといいな、と思っています。



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