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先帝祭の夜

  • 2025年10月5日
  • 読了時間: 2分

更新日:2025年10月25日

私が子どもの頃の話です。

小学2年生から4年生まで山口県下関市に住んでいました。その昔、壇ノ浦の戦いで源氏が勝ち、平家の人々が海の底に沈んでいった場所です。下関では平家の人々と幼くして亡くなった安徳天皇の霊を鎮めるため、先帝祭というお祭りがあります。安徳天皇に扮した子どもと、華やかな着物を着て女官に扮した人たちが行列をなす様は美しく、子どもの私は「大人になったら、この行列に参加したい」と思っていました。

今は違うかもしれませんが、私が子どもの頃の先帝祭は日のあるうちに開催され、夕方になると見物していた人々もみんな家路につき、人通りはまばらになっていました。

私の家は高台にあり、先帝祭の行列が通るメインストリートがよく見える場所で、わざわざ苦手な人混みに行くよりも家から見物して楽しんでいました。

ある年の、先帝祭が終わった夜のことです。私は寝ていたのですが、外がざわざわとしているような気がして起きました。夜中の2時くらいだったと思います。すぐ近くに青果市場があり、朝の4時くらいになると市場で働く人々のざわめきのような音が聞こえてくることがあったのですが、なんとなくそれとは違う感じの音が耳に入ってきたのです。

「何だろう?」

私はそっとカーテンを隙間から外を見ました。メインストリートがぼんやりと光っています。目を凝らしてよく見ると、人が行列をなして移動しているように見えました。

「こんな夜中に何だろう?先帝祭って夜中までやってるのかな?」

そう考えた時、ハッとしました。

これは本物の行列だ。海の底から亡くなった平家の人々が上がって来ているんだ…

背筋に冷たいものが走り、私は怖くなって布団にもぐりこみました。

翌日、家族に昨夜の話をしましたが、みんな「寝ぼけていたんだよ」と言って取り合ってくれませんでした。そのうち自分でも「寝ぼけていたのかな」と思い始めていました。

でも数日後、昔から下関に住んでいる友達のおばあちゃんにその話をしたら、そういうものを見た人は、今までに何人もいたそうです。

「まだ彷徨っているのかね…」

おばあちゃんがポツリと言いました…


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